『真摯に、偽善的にならずに語る』
本屋で何故か引きつけられて買いました。重松清氏の著作は、ほとんど読んだことがありませんから、今までの氏の作品の癖というものと違うところは解りません。
戦争を描くと、悲惨さ無念さをバックに著者がエセ正義の味方になってしまう作品も多い。
逆にエンターテーメント性を重視するあまり、戦争賛美にとられかねない作品も多い。
この作品は、淡々と悲惨な最期を迎えたであろう人々の発見された日記と現代に生きる家族たちを見つめる物語を丹念に追っていっている。
この人たちの生き様、と自分たちの生き様。普段の生活では、なかなか見通すことの出来ない人生を生きる上での軸というものを考えさせられる。
人は、いつでも 生きていく。この本の読者となる人は最後に紹介される高校生たちのように これらの人の生き様を目の当たりにして様子が少し違ってくるのではないかと思う。
講談社 エ600円