『惨めさや悔しさを見つめて』
先生と(元)子供たちにまつわる短編小説6篇を集めた1冊。
雑誌『小説新潮』より
◆白髪のニール
◆マティスのビンタ
◆気をつけ、礼。
雑誌『yom yom』より
◆ドロップスは神さまの涙
◆にんじん
◆泣くな赤鬼
本書のために大幅な加筆・改稿を施した、
ということなので、
6つのいずれもすでに読んだファンの方も
もう一度、こちらで読んでみてもいいかもしれません。
個人的には、『にんじん』が印象的です。
yomyomで既に一度読んではいるのですが、
この最後は私にとっては、「そう来るかぁ」っていう感じ。
意外にも、ズバッと、
後味悪いようで悪くないっていうのが、いいなと。
他の作品も・・・
『白髪のニール』での、
ロックン・“ロール”についての件には
そうなんだなぁ、って少し感慨深いものがありました。
『マティスのビンタ』に出てくる
先生の生きざまとか想いにも普遍的なものを感じます。
たとえば、野球部員で言うなら、
孤高の孤独で戦うエースと違って
一人補欠で凹まずにはいられない部員が
心に抱く負の心情がうまく描かれていて、
ネガティブな面を描かれていたとしても、
読んだ後味は悪くなく、すっきりする。
小説で描かれるそういったリアルな心情描写も
重松さんの小説が好きな理由のひとつですね。
新潮社 エ1,470円