『これはなんだ?』
桜庭一樹さんが小説家として開眼しつつあった頃の作品。
大筋は、ゲームのなかの美少女が現実世界に飛び出して、おたくっぽい主人公と仲良くなるという話。これだけ取り出すと、しょうもない物語かと思ってしまうが、この作者の持ち味は、物語に不釣り合いな残酷さや暗さにある。実際、本書でも発端部分の救われなさはものすごい。恋愛シミュレーション・ゲームで、プレイヤーから飽きられてしまったキャラクターの救われない日々が描かれているのだ。読んでいて暗い気分になってくる。
しかし、本書は発展途上の作品らしく、お気楽なライト・ノベルの色合いも強い。
のちの作品を知る読者には面白いが、これ一冊とってみるとどうなのだろう、この本?
角川書店 エ円