『三島由紀夫と恩田陸』
「ロミオとロミオは永遠に」もそうなのだが、この作品の根っこには、三島由紀夫の<夢と生まれ変わり>があるような気が、私はする。三島「豊饒の海」では、体の一部にあるほくろが、輪廻の証拠(であるかのように、と言うべきか)として登場しているが、本作「ライオンハート」では、ハンカチに記された文字が、ほくろの代わりを果たしている。三島と違う点は、いま少し触れたが、三島の場合は、輪廻なんて、ほんとはねえよ、と突っぱねてしまうが、恩田さんの場合は、いや、あるんじゃないの、あるわよ、あるのよ、と言っている点だろう(これは、あくまで、たとえばなしですよ)。確かこの作品で、だったと思うが、斧は断ち切るだけじゃなく、より強く、結びつけることも出来る、確か、そんな言葉を目にした。含蓄があり、美しい言葉だとも思いました。夢を持たせてくれる作品ですね。私は好きです。
新潮社 エ660円