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黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)



『しんみりしました』
こちらは、蒔生と節子の視点で語られる物語です。

蒔生のお当番で、物語全体を貫いていた梶原憂理の謎が解けます。
ただ、かなり最初のほうで、事情はだいたい察せられるかなあ、という気もしました。
ありきたりではあるのですが、ひとまず彼の話で物語全体の山場が終わるかな、という感じでした。

ラストは節子。
彼女の視点で、旅の一行はJ杉までたどり着き、終わりを迎えます。
彼女なりの語り口であらわされる自然の大きさと、蒔生を中心としたどろどろとした人間関係の中、唯一外側にいたかのように見えた彼女の事情とが、よくマッチしていました。
これまでの3章でそれほど内面があらわされていなかった分、節子のお当番はおもしろかったです。

旅が終わる切なさもよく出ていたし、いいお話だと思いました。
恩田陸さん、下手なミステリー書くより、こういうお話のほうが向いている気がします。
講談社 650円

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