『1972年、1982年、1992年の作品からのセレクション』
◆「一匹や二匹」(仁木悦子)
櫟究介(あだ名はオバQ)と杉岡康志(あだ名はコーヒー)は空地で子猫を二匹拾う。
二人は飼い主になってくれる人を探すため、ほうぼう家を
訪ねていたのだが、偶然、ある家で死体を発見してしまう。
究介は、現場から立ち去っていく男の姿を目撃するのだが、
その人は究介のよく知っている人で……。
ミステリというよりは、清く正しいジュヴナイルといった印象ですね。
また、初出が1981年ということで、その時代の雰囲気を味わうこともできます。
子ども同士の無邪気なやり取りや大人との関わり方、ご近所付き合いなど、
現代では喪われてしまった人情や牧歌的な光景が封じ込められています。
講談社 エ730円