『巧みな人物描写』
キャラクターがいい
頭脳明晰、中性的でなんともいえぬ魅力をもつ主人公恵弥が北海道のある街に降り立った。それは不倫の果て、かけおちした妹和見を連れ戻すため、というのは名目でこの二人に、和見の不倫相手、そしてその妻、そして謎の男多田が絡み、謎の「クレオパトラ」をめぐって物語は進んでいく。
なにより面白いのは、非常に賢く洞察力のある登場人物たちの腹の探り合いと心理作戦。だまされたつもりが実は裏をかいていたり、あるいはその逆だったり、悪人でもなく善人でもない人々。
実生活ではあまり友達にはなりたくないような小憎たらしい登場人物たちにどんどんひきつけられていく自分がいた。
どんでん返しが続いていって最後にときあかされた「クレオパトラ」の正体とは、そして絡み合った人間関係は?
ストーリーも面白かったが、それ以上に魅力的だったのは人物描写。読んでいてとても楽めた。
双葉社 エ600円