『村上春樹の人生哲学:長編作家=長距離ランナー』
この本は作者のマラソン論であると同時に、小説家としての人生論としてかなり意識的に纏められている。端的に纏めるなら、それは長編小説を書くことも長距離マラソンを走ることも、共に毎日の積み重ねの上に可能であること。そして、それは作者自身にとって、一日一日を生きていくということに等しい。作者のこういうストイックな創作態度は、この春に出た雑誌「Monkey Business」第5号のインタビューでもじっくり語られているので、未読の方は合わせて読んでいただくと味わいが深まるだろう。
運動でも勉強でも仕事でも、地道な毎日の積み重ねがモノを言うのが人生だと思うし、僕も作者同様、そういう生き方しかできない地味な人間なのだということに40手前になってやっと気がついた。そんな大多数の人間にとって、この本は「ランニング本」以上のものを気づかせてもらえると思う。
文藝春秋 エ1,500円