『魅力的なキャラクター』
この巻の見どころは何といってもカーリンの登場でしょう。芯がしっかりしていて気立てのいい彼女はシェンとは正反対ですが、二人のやり取りは読んでいて飽きません。田舎娘をここまで魅力的に描けるとは驚きです。宮部氏の持ち味はやはり個性豊かなキャラクターにあると思います。
他方で時空や夢に関する設定が精緻になってきていますが、読んでいてもあまり理解できないし興味がわきません。異世界の人間が夢の中で捕り物劇を繰り広げるという、かなりファンタジックな内容なので、どれだけ科学的要素で裏打ちしようとリアルにはなりません。作り話だと割り切ってしまったほうがよっぽど楽です。登場人物たちのやり取りだけでも十分面白いので、細かすぎる設定は蛇足だと思います。それに次の巻が出るまで間が開く本作にあっては、このような設定を忘れてしまう人も少なくないでしょう。
徳間書店 エ1,680円