『「我々は、被害者同士で殺しあい、傷つけあったような気がしますね」』
本書はベストセラー作家・宮部みゆきのサスペンス小説である。
私自身、過去に宮部氏の小説は『鳩笛草』『クロスファイア』『ブレイブ・ストーリー』に続き、今回で4作目となるが、本書を読むきっかけは、偶然、コミック版の表紙(ウェディングドレスを着た花嫁がショットガンを構えるイラスト)に魅かれて手にした次第である。
かつての恋人・国分慎介の結婚式場へ散弾銃を持って現れた関沼慶子、その彼女が銃を所持している事を知った事からある計画を実行する釣具店店員・織口邦男、同じ従業員仲間で唯一人、織口の過去について把握している佐倉修治、国分慎介の妹で関沼慶子を慕い、味方する国分範子、妻・佐紀子の急病を見舞うために夜行運転する神谷尚之、その息子で家庭環境が原因で口を閉ざした8歳の少年・竹夫、
主だった登場人物たちが各々の思惑に動いて錯綜する事により、物語が二転三転と思わぬ方向へ展開する息もつかせぬ内容となっている。
読後感としては、真の主人公が誰なのか、はっきりせず、モヤモヤとした心境となるが、いうなれば上記に掲げた登場人物たち全員が、この物語の主人公であるようにも思える。また、物語の背景にある動機にも『クロスファイア』に通じるものがあり、普段は温厚でも憎しみが憎悪を掻き立て途轍もない行動に出る姿(作中では“怪物”と表現)に圧倒され、ラストもスッキリしないものの、個人的には堪能しました。
光文社 エ650円