『それでも私は生きていく』
本書は、芯の強い女性を描いた中編小説3本から構成されます。
ヒロインたちは、他人には明かせない三者三様の秘密を持っています。
その秘密を初めて知り、どう自分をコントロールして生きていくかを描くのが、
「朽ちてゆくまで」です。前向きな気持ちになれます。
次に、その秘密をずっと隠してきたが、
ついに解き放つ時が来たと悟って一途に行動する女性を描くのが、
同「クロスファイア」の原型でもある「燔祭」です。
ヒロイン自身と秘密を知ってしまった男性の心の動きや、
社会問題に対する問題提起などを含んでおり、
また、話もドラマチックに展開していて最もお奨めの作品です。
そして「鳩笛草」は、
長らく隠してきた秘密を分かち合い、再び人生の一歩を踏み出そうとする女性刑事の姿を、
いくつかの事件の解決や警察内部の人間模様などを交えて描いています。
非凡な何かを抱えて悩みつつ、力強く歩もうとするヒロインたちの姿は、
読んでいて実にすがすがしいです。
光文社 エ620円