『一度断ち切られたもの』
三浦しをんの作品を始めて読んだ。多田と行天の同級生コンビが便利屋をやり、便利屋業を通して知り合う様々な人との関係を軽妙なタッチで描いている。
行天は高校時代、級友の悪ふざけが原因で、小指の先端を切断し、それを縫合した経験がある。「一度断ち切られたものが、元通りになどなるわけがない。」(130頁) この小説のほとんどの登場人物は、それぞれ「一度断ち切られたもの」を持っている。「一度断ち切られたもの」は諦めるしかないのか。そうではない。この小説の最後の一文(読んでのお楽しみ)が、希望を持たせてくれる。
文藝春秋 エ570円