『一気に読了』
本作品は、95年11月に発刊され山本周五郎賞を受賞した「家族狩り」の文庫化にあたり、作者が全面的に書き下ろした新作である(家族狩りの文章を1行も使っていない!)。本作の第1部を皮切りに、全5作が毎月発刊される。
残虐な方法で夫婦が殺害され、その子供が自殺体で発見されるという事件が相次いでおこる。子供たちは事件前から家庭内暴力を起こしておりその果てに起きた事件として処理されるが、事件現場に立ち会った警部補・馬見原は、その結論に疑問を抱く・・・。一方、作品に登場する主要な登場人物それぞれが「家庭・家族」にトラブル・トラウマを持っており、第1部では主に馬見原の事情が描かれる。
「家族の崩壊」と「そのしわ寄せに苦しむ弱者・子供」という本作品のテーマは、99年の大ベストセラー「永遠の仔」に通じるテーマである。「家族狩り」が発刊された95年当時と比べて家族を取り巻く状況は悪化し、様々な事件が現実に多発している。これらの社会情勢の変化にあわせ、作者がどの様なメッセージを私達に与えてくれるのだろうか?
いずれにせよ、発刊を待ち焦がれただけあり、一気に読了させてもらった。期待に違わぬ出来で、ミステリーファンならずとも絶対買いである。
大活字 エ3,129円