『重松清の物語講座』
NHKのテレビ番組「課外授業ようこそ先輩」を書籍化したものです。重松清氏の名があったので手に取りました。同氏がかつて在籍していた(転校のため卒業はしていない)米子市の福米東小学校の5年生のクラスで3日間の授業をするという内容です。
授業の冒頭に同氏は苦手なオレンジジュースを自ら飲んで、苦手な食べ物は具体的にどういった点が苦手で、どうなれば苦手でなくなるのかを子どもに考えさせます。そして、自分が嫌いなものでも人は好きかもしれない、他人の視野で物事を見れるようになろう、という点まで子どもを導いていきます。
そして、視点を変えることを学んだ子どもに自分以外を主人公にした物語をそれぞれ書かせるのですが、子どもが書き始めた話にどんどん注文をつけるくだりが圧巻です。物語を書く「回路」が同氏の頭の中で完全に繋がっているからこそ、「こうすればもっと面白くなる!」というポイントが瞬時に見えるのでしょう。
氏の作品は人間がよく書き込まれていてリアルさを感じますが、「人間に対する興味というか、好奇心、それはたぶん転校生生活がつくった」、と述懐しているのも興味深いです。
KTC中央出版 エ1,470円