『『カラス』を夜中に読むと,夢見が悪くなるので要注意』
バブルの絶頂期に分譲マンションを買ったが,その直後からマンション価格が下落し,今では自分より1000万円も安い価格で同じマンションを購入した人(あなた)がいる。あなたは,妙に私に親しげにして,「一緒に家族でキャンプに行こう」などと誘うが,あなたの一家はマンション中で目の敵にされ,イジメの対象となっている。
そんな冒頭の作品『カラス』が,夜中に読んでいてぞっとするほど怖かった。私や友美を含むマンション住民の微妙な「狂い」方,あなたの一家に対する陰湿なイジメが,本当に怖い。
重松の作品は,陰湿なイジメを描きながら,どこかホッとできる救いがあるのが普通だが,本書は違う。が,これはこれで,普通の人の心の中の陰湿さを明らかに描いた作品として,読む価値があると思う。
新潮社 エ460円