『面白かった』
ラノベからエンタメまで、ジャンルを跨いで良作を生み出す小説家・桜庭一樹の周辺事情を綴った読書日記。とにかく読書量が半端じゃない、古今東西ジャンル不問で本を読んでる事にびっくり!家に帰ったら本が地崩れを起こして生誕百周年のジョンがすっ飛んでいたとか、思わず笑ってしまう箇所も多々あり。
食事シーンも多く出てくる。とにかく桜庭さん食べる食べる。本を読みながら食べるという少々お行儀の悪い事をしてるのだが、お店で食べる料理も家で食べる料理も詳細に記述されてて美味しそう。食べ物の話と本の話が四対六ぐらいの比率で語られてるあたり恩田陸のエッセイ「小説以外」に似た感触。
編集者K島さんとの息の合った会話はほとんどボケツッコミ漫才の境地。まさしくあうんの呼吸。作者が読んだ本がページ下部に紹介されてるのもすぐ原作にあたれて嬉しい。実際この本を読んで無性に気になった作品が何冊もあります……そのひとつが「黄色い壁紙」だったり。
読者感想とともに創作裏話も収録されてるのも興味深くファンには嬉しい。
「赤朽葉家の伝説」や「私の男」執筆中の著者がどういう生活をしていたか載ってるのですが、どうやら書いてるものの影響をダイレクトに受ける人らしく、「私の男」を書いてる時は読書もぴたりと止まり、食事もろくに喉を通らず、背中にあばらが浮き出したとか……
おいおい大丈夫かよー、と心配になってきます。
日記の末尾が「読み終わって、寝た」「考えながら、寝た」とパターン化してるのも乙。結局寝るのかよ!と突っ込みたくなります(笑)
新進作家のエッセイとして面白いのは勿論ですが、読書ガイドブックとしても充実した内容なので、目新しい本と出会いたい方はぜひ手に取ってください。
東京創元社 エ1,680円