『たいへん遺憾ながらハマりました。』
桜庭さんの小説を読むのは、『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』に次いで二冊目です。
ブレイクされる理由もわかりました。だって読ませますもん。
桜をモチーフにした話はありますが、七竈とは。まことに遺憾ながら、
初めてそんな木があるのを知りました。
一気読みできるエンターテイメントではなく、
味わいながら1日一、二話、あるいは数ページ読むのがちょうどいいペースです。
七竈の母が「辻切りのような」行動にでますが、
話のクライマックスで時間をさかのぼって、その発端や行動原理に触れるので
切なさが増します。本質は「いんらん」ではなく、素朴で純粋だったのでは。
少女・七竈は狭い地方都市にあって、
「ここにはいられなく」なるほど、あまりにも残酷な状況です。
誰も何も言わなくても成長すればするほど真実がいぶり出されていく一方で…。
それでも、「君がそんなに美しいのは、母がいんらんだから」
と超自然の理由にして誰も何もいえないのが痛切。ひたすら痛切。
緒方みすずの存在は、最初は緊張が走りましたが救いになりました。
また、違う自分になろうとした七竈の母と、その母が憧れていた、
年をとることで本当の自分を知ろうとした往年の人気アイドル「乃木坂れな」。
この二人は、見事で皮肉なコントラストをなしてます。
「若くて美しくて特別ならば素晴らしい」
という常識など滅びてしまえって訴えを、機関銃に込め、うぉん!って感じ。
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