『2・26事件。』
宮部みゆき著『蒲生邸事件』を思い出しました。
よく似たテーマを、違う切り口と結末で料理していますので、
ご興味がある方はぜひ並べて読んでみてください。
どちらもとても大好きです。
「もしも過去に戻ってやりなおせるなら」
が、Ifではなく実現する世界の物語。
その技術を使えると知った人々は、
「世界の為」に「聖なる暗殺」を行うことを決めた。
一つのホロコーストをなくすことが、
100のホロコーストを起こすことになるとは知らずに。
フラグメントとして、過去の事象が短編でぽんぽん入ってくるので、
少々混乱しやすいとは思いますが。
舞台は日本。それも世界大戦前の、です。
出てくる人物の心理描写もとても丁寧です。
タイムパラドクスの説明が行われていないので
SFファンの方には少々不服かもしれませんが、
因と果の巡り方が、私にはとても腑に落ちるものでした。
ラストまで読み終わったら、再読しなおすと更に面白い作品。
もっとディープなSFもこのテーマでしたら書けるのでしょうが、
それはSF専門の方におまかせするということで。
個人的にはもうちょっとメカメカしている作品が好きですが…
(シンデレラの下りをもっと読みたかったな、と)。
途中出てくる「魔法の国の王様」の話が深いです。
集英社 エ1,680円