『ストーリーは良いですが、表現に難ありと思います』
ストーリーそのものは良かったのですが(少なくとも上巻は)、
表現が気になりました。
具体的に述べると、同じ語や抽象的な表現、余計な描写が多いと思ったのです。
まず、学生時代の仲間同士が旅行に行くところから始まるのですが、
時系列が前後するので、最初は潔が不参加であることが分からず、戸惑いました。
そして、主題が「憂理」のことなのに、彼女の名前が出てくるより先に、P71でただ「彼女」とだけ表記するのは、唐突な印象を受けました。
個人的には、「憂理」の名前が先の方が良いと思います。
それにしても、パートナーがいる男女が、それぞれ単独で旅行に参加などするものですかね?
彰彦が女性から呼び捨てにされるのも、現実的ではないような気がします。
彼は蒔生と大学から付き合いがあるというだけなので、そこまで親しくなることができるものなのでしょうか、疑問に思います。
また、P223あたりで「幸福」が4文節の間で5箇所も出てくるのが読み辛く、
「こと」や「そこ」などに置き換えた方がよいと思いました。
それ以外にも、P231やP278あたりの描写はややくどく、
省いた方がすっきりすると感じた文章もありました。
節子が分かりにくい話し方をするというようなことも書かれていますが、
読みやすくすることの方が大切ではないでしょうか。
同様にP206?208、P306?314の人達の話も、入れなければいけない必然性は感じませんでした
(下巻でリンクしていたらゴメンなさい)。
そうそう、独白なのに「話が逸れたが」という表現もありましたね。
このようなところも、違和感を覚えるものでした。
何かアラ探しをしているようで嫌になりますが、気になるものは気になるのです。
下巻はもっと読みやすいことを期待します。
講談社 エ650円