『構築された世界』
この作品は基本的に世間から切り離された建物の中で展開する話なので,「そして誰もいなくなった」のような,いわゆる「館もの」の要素が大きい訳ですが,その「隔絶された空間」の構築に,この映像は大いに成功しています.その象徴の一つは,特典映像で監督も語っているように,「五角形のテーブル」.
台詞をしゃべっていない人が画面の隅で何をやっているのかまで目線で追いかけてしまうように,カメラアングル・カット割りの全てが計算されています.「女性による群像劇」的な性格まで含めて,中原俊の名作櫻の園 [DVD(旧版)で助監督を務めた経験が生かされているのでしょうか(勘ぐりすぎか?).女優陣の良さも皆さんがおっしゃる通りで,特に西田尚美さんファン(筆者のような)には必見のシーンもありますね.あの「法則」のシーンのカット割り,それと全編を通じたライティング,この辺りに市川崑の正統的な後継者を見たような気もしました(言い過ぎか?).
最後に脚本について.会話の妙はもちろんありますが,何となく原作特有の,女性ならではの「毒」が薄められているように思われるのは脚本(加えて監督も)が男性だからでしょうか.それを割り引いても,原作との比較という観点でも不満にはならない出来のように思います.大森寿美男というと「てるてる家族」や「風林火山」が有名ですが,NHK版クライマーズ・ハイ [DVD]でも原作をうまく料理していましたし,世間的にはほぼ無視されたが個人的には超名作ドラマと思っている一番大切な人は誰ですか? DVD-BOXでも,オリジナル作品としていい仕事をしています.
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