『おもしろかったです。が。』
久々にラストまで疑問を持たずに読める恩田作品でした。
登場人物全てが疑わしくて(子どもですら)、
真相が知りたくて一気に読んだ感じです。
難点は登場人物の描き分けでしょうか。
メインのお年寄り3名が、はっきり言って誰が誰だか分からないうちに、
読み終えてしまいました。
そこは余り重要ではなかったのかも知れませんが、
長男・次男のような特筆すべき点以外、発言などにも特徴がなかったように思います。
そう考えてみるとやはりこれは、
閉ざされた場所での出来事=館もの=著者お得意の舞台脚本、
だろうなという結論です。
3名の外見の違う役者が演じれば、理解できるお話ですから。
ちょっとした事件は起こりますが、大筋が登場人物の会話だけで進む点は、
ここのところ一貫した著者の作風と言えます。
私たち読者は”一体この先どうなるんだろう”と思って読んでいるのに、
登場人物たちも”どうなるんだろう”と探りながら演じている感じですね。
なにもかも芝居がかっていて、現実感がなさ過ぎるのが、
物語にのめり込めない理由だと思います。
祥伝社 エ1,680円