『2冊目の小川さん』
「博士の愛した数式」に続いて小川さんの作品を読みました。
チェンバロの音や素材の描写、カリグラフィーのこと、別荘での季節の移り変わり、人物の心の動きなどが繊細に表現されています。なかでも、湖にボートを浮かべるシーンは深く静かな水の色が目に見えるようで好きです。
小川さんの作品には様々な職業の人が出てきますが、その仕事について丁寧に研究されている、ということがうかがえます。このチェンバロ製作者やカリグラフィーという職業にも、読むという体験によってじかに触れたような感覚が生まれます。それは小川さんのそれぞれの職業に対する敬意や愛情からではないかと思います。
文藝春秋 エ円