『生と死をつなぐインターフェースとしての身体』
本短編集からは、人生における、言葉には出来ない「いとおしさ」とか「はかなさ」そして「生きる強さ」みたいなものをひっそりと感じ取ることができます。作中人物たちは、何かを相手に提示せざるを得ず、それを受け取った者は、何か大切なものを引き受けます。提示されるものは一応に「死」の匂いがします。しかし受け取った者はには、ひそやかだけども確かな「生の光」が芽生えます。
死者から生きている者が何を汲み取るのか、ということは彼女の大きなテーマなのであろうと思います。彼女が肉体やその一部に(決て生々しい肉体や息遣いではなく)拘るのは、自己と他者を、あるいは生と死をつなぐインターフェースとして身体を捉えているからかもしれません。
新潮社 エ420円