『独特の口調、リズムに、物語の推理性が加わった傑作』
他の方のレビューとかを見ていると、どうも、私は
読む作品の順番を間違えているらしい。
本来は、『風の歌を聞け』、『1973年のピンボール』そして
本作品が一連の登場人物と、その物語らしい。それで、この後は、
『ダンス・ダンス・ダンス』を読む、というのが、正当な順番
だったらしい。
し、しまった。
とりあえず、『ノルウェイの森』に、なんとなく調子が似ている
ような感じだったので、あえての大作『海辺のカフカ』を今回は
辞めて、こっちにしたのだが・・・・。
でも。ま。
やがては、どれも、読むだろうから、順番はいいか。
まだ上巻だけだから、書評を書くのもいかがなものか、
という気もしましたが、でも、文章はおもしろい。
人気があるのも、うなづける。嫌いな人がいるのも、うなづける。
なぜか?
語彙や文章が簡単。簡単な文章で綴っていく「僕」。
音楽や詩のように、日本語のストリームが流れていく感触が
心地よいのかもしれません。
でも、ときどき、独特の哲学のような、思想のような、物語の
亀裂、ノイズのような台詞、言葉がどかっと出てくる。
そんなところが人気の秘密なのかもしれません。それはさておき。
この『羊をめぐる冒険』は、物語としても、今のところ、ミステリアスで
読者の興味を引きます。乾いた感性の物語というか、独白、手紙、会話
で成りたっているのは、いつものとおりなのですが、一体、「鼠」が
「僕」に託した、北海道で取られた「羊」の写真に写った、謎の
星型をもつ、存在しえない羊、と日本の闇を牛耳るフィクサーが追い求める
羊との因果関係。
この謎が、結局、僕と彼女を、「鼠」が待つ北海道へと、運命的な旅立ちを
引き起こす。
早く、下巻を読まなくっちゃ。
講談社 エ500円