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『宮本輝の本~記憶の森~』

『亡き友は宮本輝を高く評価した。』
　宮本輝。
　私は　今は亡き友のことを思い出す。
　友はのちに「あのころは石になったような感じだった」と言った時から、宮本輝を全部読み出した。
　自分の時代を５歳年下の者が大阪弁で話している。
　大阪の風景は、宮本輝と一緒だ。
　友は、結核療養所に二回入院した。一回目は二年間。二回目は二年間。かれが同級生と呼んでいた者はかぎりなく宮本輝に近い歳だったのだ。友は２回手術した。一回目は某市の結核療養所で肺切除術。二回目は某総合病院で肝臓切除術。身体にメスをいれられる。死を覚悟していた友。
　一回目は、外に出て行くため。そして友は外にむかい歩み始めた。攻勢であった。結核療養所のおおきな文化をすべて吸収して某高校に復帰したのだ。なぜ某高校に復帰したのかそれがよくわからない。
　家業を継ぐ道は避けようとした。某高校に執着したのはなぜか。若い教師を論破し、若い同級生たちと一緒に高校生活をおくるのはなぜか、某サークルに籍をおき、某高校の文化系統のサークルを牛耳続けたのはなぜか。
　今回、私が二回目の腹部手術をうけるとき、かれのことをおもいだす。
　ませていた友は某歳、術後死去した。原因はわからない。
　突然、生体のバランスが崩れてしまい、意識をうしない、死んでしまった。
　友の思い出は、宮本輝へつながる。
　そして二回目の手術におのれをかけてしまったのはなぜなのかという問いへと発展してしまう。

宝島社　円

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