『予想外の作品スタイル』
TVドラマなどのイメージがあったためか、読んでみて驚きました。
「半七捕物帳」って、こんなスタイルの本だったんだ、と言う全く予想外の印象を受けました。
最初に紹介されるのが「お文の魂」なのですが、地の文章は明治の初期で、そこに半七老人が登場し、江戸末期に起こった事件とその顛末を語ると言う形で、この作品の方向性をはっきりと示しています。
全体的な印象は、怪奇小説的な話が多いなあと言うことです。
一つ書き方を変えれば、「怪談」になってしまいそうです。
それでいながら、その表現はとてもリアルで、登場人物もイメージしやすくなっています。
そして、非常にテンポ良い文章で綴られており、江戸ッ子の気風の良さがそのまま表されているようで、読んでいて非常に気持ちのいい文章です。
この中には、十二編の作品が収められていますが、個人的な好みは、「石燈籠」「奥女中」です。
次のアンソロジーが楽しみです。
筑摩書房 エ円