『下巻がますます楽しみになる』
巻を読んでいたので、この中巻も楽しみにしていた。
結果は期待どおり。1つ退屈なモノがあったけど。
この中巻では、「クスリと笑える」短編が紹介されている。
もちろん、登場人物にとっては笑えない状況だが、読者として、その結末に笑えるモノがある。
松本清張もユーモア小説を書いたりするのだと感心してしまった。
それは、書道教授、共犯者、空白の意匠、だ。
書道教授は主人公が人を殺してしまうのだから、笑い事ではないが。
でも主人公の妄想で話が進んでいく。
共犯者も同様に、妄想で話が進んでいく。
主人公の妄想癖が過剰なのか、松本清張の筋の展開が強引なのか、どちらなのだろう?
とかんがえてしまうくらい、この主人公、妄想に突き進んでいく。
そして警察に捕まってしまう。
「自分を客観的に見れるんです」と福田総理が自慢したが、自分を客観的に見ることは大事なんだということがよくわかる。
空白の意匠はサラリーマンの悲哀を描いた小説。
いちばん気配りして、動き回ったのに、詰め腹を切らされるなんて。
下巻がますます楽しみになる本だ。
文藝春秋 エ740円