『第2・3巻=第2部。歪んだ友情物語?』
本書と第3巻は、全体の第2部を構成しています。
第1巻=第1部で被害者の観点から描かれた物語を、
裏から再び眺めようという試みであり、恐るべき凶悪犯罪が立体的に立ち上がります。
非常に面白い構成であり、第3部でどう止揚されるのか、興味深いのですが、
第2部は、大半を、唾棄すべき思い上がった犯人の描写に注いでおり、
世の中をなめ切った彼らの言動は不愉快極まりないです。
一応犯人の側の「事情」も語られますが、とてもじゃないけれど、
被害者の無念に見合うものとは思えず、終始重い気持ちで読み進めました。
ただ、正直な感想として、断片的に、昔、犯人の感情に似たもの、
すなわち親兄弟や世間に対して幼稚で不遜な感情を抱いた記憶もあり、
そういったことへの後ろめたさも、ほんの少しですが覚えてしまいました。
また本作の、現代社会における「失踪」女性の要素は「火車」をほうふつとさせ、
家族の機能不全が生み出したモンスター的な青年の要素は「理由」を思い起こさせました。
第3部、物語がどのような着地をするのか。
第2部で不快な思いをしただけに、カタルシスを期待したいところですが…。
新潮社 エ620円