『岸辺の百夜行アルバム』
う?ん、何だろう、この読後感の虚しさは。やはり三浦さんにこういう暗い話を書くのは、向いてないんじゃないか。
既に作風を知っている作家の場合、できるだけ粗筋とか書評とかを目に入れないで、まっさらの状態で読み始めたいと思っているのですが、今回ほど裏目に出たのは久しぶりです。本のタイトルと最初の2ページぐらいを読んで、「寂れた島が舞台だし、『白蛇島』みたいな話かな」と思って気軽に読み始めたのですが、意に反して、重い話でした。しかも別に小説としての新機軸があるわけでもなく、『岸辺のアルバム』やら『百夜行』やら『残虐記』やら、どこかで目にしたような作品の上辺を掬い取っただけ、みたいな感じで。
個人的に、三浦さんの才能の本質は小説家ではなく(あ、言っちゃった。でも「直○賞」を獲るの、早すぎたと思ってます)、オタク系エッセイストだと思っているので、もしこの作品のどこかに「光」があるのだとしても、残念ながら、それは私には届きませんでした。ほんの一筋さえも。
集英社 エ1,575円