『小説家が書いた登山記』
登山記、旅行記の類いは、なかなか読めたものがない。理由は、その地に固有の名所・名産の紹介に筆の多くが割かれていて、筆者自身の感想というのは「きれい」「すごい」などのありきたりの感情に若干の肉付けをしたすぎないようなものが多いからではないか(かなり乱暴な物言いですが)。
その点、この「あしたはアルプスを歩こう」は、「小説家が書いた文章」。もちろん、ドロミテに行くことでしか書けない内容にはなっているが、見たこと、感じたことが、この人のフィルターを通して、この人の言葉になって表されている。「登山者」にならず、「小説家」が山に登っていることで書ける文章だと思った。
写真はあってもいいのかなぁ、と思ったけれども。
講談社 エ420円