『角田光代さんの初期の作品』
もし、主人公と同年代だったら感想は異なっただろう。
角田光代さんの作品は、時代を切り取る描写が素晴らしい。
その礎であったと思えば、面白く読めるだろう。
主人公の悩み、無力感、漠然とした不安。
それらが他者からの言葉によって何かに気付く。
若者特有のモラトリアムだ。
模索している様が、読んでいて苦々しかった。
それは、もしかしたら、私自身が悩みもがいていた年頃に
もう戻りたくないのに、引き戻されてしまうほど
リアルな描写だったからかもしれない。
今の角田光代さんの作品に共感できるのは、
こういった若い頃の作品があるからで、
それはあたかも、人の人生のようだ。
年を取ることはとても面白い。
私も主人公のように、漠然とした不安を抱えて生きていたのだろう。
講談社 エ580円