『Ex Libris──わが懐かしの蔵書票に。』
きっかけが何であったかはすっかり忘れてしまったが、
高校の頃からしばらく「蔵書票」を愛用していた。
使い方は人それぞれだろうが、
私は購入年月日と名前を記して、見返しにのり付けした。
一冊一冊の本に、今よりはるかに愛着を感じていたことは間違いない。
この作品に、「旅する本」と題する一編が収められている。
高校を卒業した時に処分した本に、
大学の卒業旅行でたまたま訪れたネパールの古本屋で再会する。
さらに、のちに作家となって訪ねたアイルランドでも再びめぐり逢う。
そんなストーリーだ。
この物語は、彼女の実体験から生まれている。
ネパールのボカラという街の書店で、
角田さんはさまざまな言葉、さまざまな国の本が書棚に並んでいるのを目にする。
ここにたどり着くまでに読み終えて“荷物”になったか、
あるいは以後の旅費の一部に充てようとしたか・・・。
ここからの旅の途上で読もうと、買い込んだ旅人もいたことだろう。
こうして、本は旅をつづける。
私が八王子に転居したのは、大学に入学する1週間ほど前のことだった。
あわただしい時期であまり深く考えもせず、数100冊の本を近所の古書店に売却した。
いま思えば、少しばかり悔いが残る。
昔も今も、本はいつも書棚からあふれているものだ。
このとき処分した本の多くには、蔵書票が貼付してある。
古本屋をめぐるなどという優雅な趣味を持ちあわせぬが、
旅先ではできるだけ立ち寄ってみようと思う。
どこか異国で、感動の再会を果たすことがあるかもしれない・・・汗。
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