『内容の薄さには呆然?ファン・クラブ向けだろう』
作家としては、日常の中に潜む非日常性を描く事で定評のある角田氏だが、本エッセイの内容の薄さには呆然とした。本来、角田氏のファン・クラブの会報誌にでも掲載すべきもので、これを一般刊行する著者や出版社の度胸には恐れ入る。
自分の身の回りに起こる出来事や、フト思い浮かべた事を、そこはかとなく書き綴れば、他人様に金を払って読んで貰えると思っている大きな勘違い。自分を超有名人とでも錯覚しているのだろうか ? タイトル作も、題名からしてpositiveな内容かと想像したら、単なるオマヌケな話で、脱力感しか残らない。全編、そうした記述が延々と続くのである。
安吾が顕著な例だが、同一人物でも作家としての力量とエッセイ家としての力量は自ずから異なる。それを、嫌と言う程再認識させられた作品。
文藝春秋 エ530円