『「え? もう終わりなの?」』
主人公が男で、ヒロインがたぶん美女で、ヒロインのお供が豚で、ばあさんがしゃしゃり出てくる小説。
これだけでは魅力は伝わらない。
この小説には「沖縄」がぎっしり詰まっている。って……、
……ごめんなさい。沖縄一度も行ったことありません。
でも、いやしかし、「沖縄」をこの手で触れた気分になれます。
物語もおもしろいけど、沖縄の文化、歴史、気候などの描写が素晴らしく描かれていて、知識だけは蘊蓄ウンチクたまっていく。
印象に残っている美しいシーンは、女の人が民族衣装(?)を着て海のそばにいるところ。
読む前は、「え、文庫でこの値段?」「え、この厚さ?」と躊躇してしまうかもしれませんし、最初の頃はまだまだ終わらないなあと思って読み進めることと思いますが、最後に多くの読者はこう思うはずだ。
「え? もう終わりなの?」
これから梅雨を超えて夏が始まる。だから、夏が終わるまでにこれを読んでしまおうよ。
文藝春秋 エ1,180円