『ツカミはOK』
離島出身のボクサーを主人公にして、ストイックで孤独で確固たる信念がなければ社会の底辺に埋もれてしまうプロボクサーの現実を描いている。誰も知らないような離島の風景と、家族の絆、少年との約束は、『お涙頂戴』的とわかっていても、読んでいる者をひきつけるものを感じる。
しかし、ボクシングの技術的な記述が中途半端に詳しいし、千駄木の人々の暖かさで『離島と東京の対比』がぼけている。短編小説としては欲張りすぎなんじゃなかろか?もっとシンプルに、離島出身のボクサーを描いてほしい。
小学館 エ620円