『これは劇団ひとりの日記なんだっ』
「陰日向に咲く」がおもしろかったので、この本も読みました。
劇団ひとりが本の中で「僕」として登場。
「僕」はネガティブシンキングで駄目ナルシスト。
今までいろいろなことの期待しすぎて、現実はそうでもないという体験と挫折を繰り返しすぎたにもかかわらず、自意識過剰のまま。飽き性のくせに、食欲と性欲と物欲はとどまるところを知らない。
でも、そんな「僕」のいいところは、駐車場で出会った「石原」さんと、富士山で出会った「藤」さんに対する価値観が同じところ。
誰もが少しは「僕」に自分を置き換えられる、そんな一冊です。
構成として素晴らしいのは、ひとつのエッセイに入る、その導入部分。
劇団ひとりの伝えたい世界が瞬間で目に浮かびます。
「陰日向に咲く」が、様々なキャラクターがばらばらに出てきたにもかかわらず、長編映画になったのに対し、こちらは「僕」というひとりの人物を通した短編映画になるような、そんな気のする本でした。
文藝春秋 エ1,050円