『もともと小5?6向け』
本書は、著者が小学校5・6年生対象の学習雑誌に連載した短編を編んだものです。
6編は、非常勤講師「おれ」が子供をめぐる事件を解決するもの。
おしまいの2編は、小学生が協力して事件を解決するものです。
まず、「おれ」シリーズについては、
非情な非常勤講師というキャラクター設定に魅力を感じます。
空虚な理想を語るわけではないが、子供の本質をきちんと把握している上に、
何より事件解決後に子供たちに発するメッセージが秀逸です。
そして、「いじめ」などの子供社会の病理の描き方がうまいです。
本人たちは無邪気に振舞っているつもりが、
実は対象者をものすごく残酷な状況に追い込んでいること。
大人には決して真相を見せない頑なさ、
そして、重大な事態が起こった時の右往左往ぶり…。
痛々しいけれど、実に的確な描写だと思います。
最後の2編については、小学生を主人公にしたユーモラスな語り口です。
そして、特に末尾の「幽霊からの電話」を一押ししておきます。
集英社 エ500円