『事件に隠された”本当の犯人”とは・・・』
7作の短編集で各々の作品では、犯人とは別に事件自体の裏側に意外な事実、犯罪の呼び水になったともいうべき人間関係が隠されており、それこそが事件の伏線、原因でありつまり″真犯人″である。その意味では人間関係に焦点を当てる社会派ミステリー的な要素も多少含まれている。それでいて、得意の叙述トリックを駆使したり、時間差のある2場面を同時進行で交互に描くなど、様々な趣向やトリックで読者を飽きさせないところが作者の類まれな才能で、東野圭吾の本領は今回も存分に発揮されていると思う。個人的にはラストの結末で恐怖を与える「白い凶器」がヒッチコックのサイコを思い出させとても強く印象に残った。
光文社 エ580円