『詐欺師としてはまだ見習中かも』
作家は詐欺師だと思う。
でも心地よく騙してくれれば快感だし
特にミステリー作家はそうする義務がある。
だけどこの作品は…。
歌舞伎の世界を題材にした必然性が弱い。
別人が各々一人称で話を進める意味が
単に作家の書きやすいスタイルだからという
意味以上のなにもない気がした。
ましてや解決に至るまでの伏線が不十分。
要は大きな嘘をつくまでに
読者にかけるべき催眠術がいい加減だったから
やらせに協力させられた不快感が残る。
個人的には期待が大きかった分
失望も大きかった。
文章の魅力はあるだけに
違うジャンルでの活躍を期待。
東京創元社 エ693円